「上司から頂いたジャケットで大会に出場します」
「上司から頂いたジャケットで大会に出場します」
それは一本の電話から始まりました。
「だいぶ前から付いたシミですが、落ちますか?」
私は、
「品物の状態や品物の素材等を見なければ、落とせるかどうか、
お答えできません」
とお答えしました。
電話でよく、
シミや汚れについて落ちるかどうか、相談を受けます(特に遠方のお客様が多いようです)。
私は、
日頃からお客様にクリーニング店は衣類の「お医者」だとお伝えしています。
皆さん、
「お医者」さんに電話で、
「お腹が痛いですが、治りますか?」
とは聞かれないと思います。
残念ですが
電話で洋服の状態をどんなに詳しく話されても、洋服を見なければ判断できないのです。
お客様には、
一度、お店にお越し下さいとお伝えしました。
数日後、お母様が写真のジャケットを持って来店されました。
息子さんが上司から頂いたジャケットだそうです。
京都で8月に開催されるバーテンダーの大会に、このジャケットを着て参加したい!
それまでに、何とかして欲しい、と。
写真にあるように、肩の辺りに古いシミ、全体にかなり古い黄変したシミも有ります。
素材は、ウールとシルクとの混紡。
ちょっと厄介な仕事です。
お母様は、何とかしてやって欲しいと話されました。
何処まで、綺麗に出来るかどうか、
シミ抜き作業をやってみないとわかりません。
頑張ってやりますとお預かりしました。
時間を見つけて、シミ抜きの原理原則にのっとって、一つ一つ丁寧に作業を行いました。
何とか作業完了。
出来上がりの電話をさせて頂きました。
数日後、今度はご本人が来店されました。
写真の出来上がりのジャケットを見るなり、
「こんなに綺麗に、ありがとうございます」と。
「上司から、君にこのジャケットを着て大会に出てもらいたい」
と言われたそうです。
ご本人:「このジャケットを着て大会に出ます」
私:「このジャケットは、あるメーカーさんのジャケットで古いものですが、商品のグレードは高いです」
ご本人:「上司もそう話していました」
「上司には、クリーニングさんもグレードの高いジャケットだと話されいた伝えます」
「上司も喜ぶとおもいます」
私は、○○ホテルでバーテンダーをしています。
何かお礼をしたいので、お越し下さいと話されました。
こんなに喜んで頂き、逆に感謝です。
お客様と一緒に喜びあえたこの日1日、
幸せな気分で過ごす事が出来ました。
是非とも、8月に開催されるバーテンダーの大会、
頑張って下さい!